STORY · ストーリー
A wooden mailbox in the middle of a field
草原の真ん中に立つ、一つの郵便受け。
草原のちょうど中央、風の通り道になっている小さな丘の上に、古びた木製の郵便受けがぽつんと置かれている。名前は「風の便り」。誰が最初に手紙を入れたのか、正確には誰も覚えていない。ただ、開業してしばらく経ったある日、来訪者の一人がノートの切れ端に短い言葉を書き残し、そっと差し入れていったのがはじまりだったと言われている。
それ以来、この郵便受けには年間を通して、実にさまざまな手紙が届く。長年連れ添った伴侶への感謝、遠く離れた友人への近況、まだ叶わぬ夢へのささやかな宣言。差出人の名前がないものも多く、時には外国語で書かれた手紙が届くこともある。私たちスタッフは、それらを大切に保管し、決して中身を公開することはない。ただ一つの例外を除いては。
毎年、夏の終わりの一日だけ、希望した差出人の手紙を——本人の許可を得たものだけ——夕暮れの草原で静かに読み上げる会を開いている。焚き火の明かりの下、誰かの言葉が風に乗って読み上げられる瞬間、集まった人々はしばしば涙を浮かべる。それは特別な誰かの物語であると同時に、この草原を訪れたすべての人に通じる、普遍的な感情の記録でもあるからだ。
"この場所に立つと、いつも何かを書きたくなる。何も特別なことがなくても、それでいいのだと思える。"
"祖母と二人で書いた手紙が、去年の夕暮れの会で読まれました。声に出して聞くと、まったく違う手紙のように感じました。"
"来るたびに、誰かの言葉に励まされる。今度は自分が書く番だと思っています。"

